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コロナ禍でのアメリカの教育状況

朝晩の気温が少しずつ下がり、庭のコナラの木に殻斗から少し顔を出したどんぐりを見つけました。もう秋だと感じさせるホッとするひと時でした。現実に戻ると、アメリカ各地で政治的思想の対立、人種問題などの社会問題と新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大、長期化による心労が重なり、安心できない社会情勢が続いています。

さらに、アメリカ西海岸のカリフォルニアとオレゴンでは、記録的な森林火災が続いており、広いエリアで空気汚染などの問題にも広がっています。一日も早い収束を心から願い、私たちにできることは何かを考え行動していきたいと思います。



2020年度の学校再開の現状

さて、夏休みも終わり、アメリカでは新年度がスタートしました。COVID-19 の感染者数が世界最多で、徐々に感染者数は減っている傾向にはあるものの、未だ気を緩めることができない状態です。感染を抑える対策の一環で、今年3月中旬より各地で学校が閉鎖となり、前年度は自宅でのオンラインリモートラーニングの形で修了しました。


そんな中での新年度スタート。アメリカの大半の学校区で、前年度に続き、オンラインリモートラーニングで学校が始まりました。地域によっては、ハイブリット(オンライン学習日と対面授業日を分けて行う)という形で始まった学区や、選択制でオンラインかハイブリッド、もしくはオンラインか対面授業かを選ぶところもありました。選択制の場合、感染リスクを考えてオンライン学習とするのか、学校生活の大切さを重視して対面にするか、親は正しい答えのない選択をせざるをえない状況です。また、限られた地域ですが、対面授業のみで学校再開をしたエリアもあります。それぞれの地域で、学校区、各学校、そして地域の人との議論を通して、それぞれの判断が下されているのがアメリカの現状です。また、COVID-19の感染者数が低いから対面授業を再開するというわけではなく、政治的な駆

け引きが学校再開やCOVID-19対策に大きく影響しています。


特別支援教育を受けている子どもたちの現状

対面授業の再開を強く望む背景の一つに、特別支援教育を受けている子どもたちへ影響があげられます。オンライン学習では、通常のサポートが機能せず、特別支援教育を受けている子どもたちが取り残されていると指摘されています。特にパソコンを通してコミュニケーションが取れるか、決まった時間にサインインしたりできるか、パソコンの基本操作ができるかなど、子どもによっては学習ができない状況が続いており、オンラインでの支援の難しさが浮き彫りになっています。もう一つの背景には、アメリカの格差社会があります。アメリカの公立学校では低所得層の子どもたちに無料で朝食と昼食が提供されていますが、この食事提供に頼って生きている子どもたちがアメリカにはたくさんいます。そのため、学校閉鎖後、すぐに朝食と昼食のピックアップサポートがはじまりました。さらに、オンラインのリモートラーニングとなってから、子どもが全く授業に参加しないケースも多々あり、参加できていない多くの子どもは低所得層家庭の子どもたちだといいます。子どもたちの安全確保、そして教育へのアクセスの問題が対面学習の再開へ拍車をかけています。


オンラインラーニングの現状

今年 3月に学校閉鎖が決まりオンラインラーニングに切り替えられた際、3つの学習形態が導入されました。同期型学習(学校の先生とのライブ授業)、非同期型学習(ライブ授業なし、授業は動画配信)、そしてオンラインプラットフォーム(オンラインで課題などが提示され、提出ができる場)です(詳細は前号アメリカからのレポートを参照ください)。新年度は、オンラインラーニングを取り入れた学校区では、3つの学習形態をすべて駆使したカリキュラムが定着しています。各学校によって、オンラインラーニングの詳細に違いはありますが、娘を例に、オンライン学習との向き合い方について考えていきたいと思います。


夏休みの間、各学校区でオンライン学習の改善を図り、学校再開に向けた取り組みがされました。娘の学校区では、新年度最初の 3 週間は全員オンラインリモートラーニングで、その後はオンラインか対面学習の選択制となりました。また、昨年度のライブ授業なし・非同期型の動画授業とオンライン課題のみと比べるとオンライン学習はより多様化され、1日2 時間のライブ授業(クラス全員と少人数グループの授業それぞれ1時間)、非同期型の動画授業(セルフペース)、そして各科目の課題とオンラインプラットフォームが導入されました。ファーストグレード(一年生)になった娘ですが、新しい担任の先生の的確な指導で、ライブ授業はスムーズに順応できました。

初日より、

①画面に目を向けて話を聞く、

②椅子にきちんと座り、必要のないものは触らない、

③指名された時以外はマイクをミュートにする、

と約束事を子どもたちに教え、都度思い出させ守らせていました。16 名の少人数クラスであることも一つの良い点ですが、6 - 7 歳の子どもたちでも、2 週目ごろには、マイクの操作をはじめ、上手に参加できている様子に感心しました。低学年こそ、オンライン学習は難しいといわれますが、まずはきちんと学ぶ姿勢から教えることが鍵であることがはっきり分かります。このほかに、自宅であっても授業中は気持ちを切り替えて取り組むこと、決まったジェスチャーを使って適宜応答すること、オンライン上のマナーについても毎日繰り返し教わっています。


ファーストグレードは全部で 4クラスですが、新年度からは学年で統一したカリキュラムが組まれ、4人の担任が同じ方針と学習内容に取り組みました。通常であれば、州のカリキュラムに沿って、各担任それぞれが指導スタイル、学習内容、方針、ルールなどを決めるため、同じ学年でも担任の考えや個性で変わります。COVID-19 によって、年度途中にオンラインから対面などへ変更する可能性があるということで、移行がスムーズに行くように学年で統一したカリキュラムが取り入れられました。ライブ授業はクラスごとですが、非同期型の動画とオンライン課題は全クラス同じ内容を学習しています。実際に、第4週より対面とオンラインの選択制に移行したため、娘はオンラインクラス担当の担任に変わりましたが、上記のように統一した内容で進められていたため、順調に移行できました。


対面授業の再開に向け



娘の学校区では、第4週より生徒の6割はオンラインラーニングのまま、そして4割は対面学習を再開することになりました。校内での学習の安全確保のため、手洗いの徹底、消毒液の配置、送迎場所や廊下などに間隔を示す大きいマークや教室内では各机にプレキシガラスが用意されるなどの対策がされました。大きな議論となっているマスク着用ですが、校内でマスク着用は必須となっています。COVID-19で学校教育は大きな影響を受けていますが、夏休みの間、子どもたちが安心して教育を受けられるよう、学校で様々な取り組みがされたことが非常によく分かる新年度となりました。今後どのような対策を講じる必要があるのか、事例から学び、科学的な根拠に基づく対策を進め、早く安全な学校生活が送れるようになってほしいと強く願っています。


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